2006年06月のメッセージ 関根 一夫
仮想的有能感
「他人を見下す若者たち」という本を読みました。興味深い本でした。その中に「仮想的有能感」という言葉がでてきました。大変興味を持ちました。
豊かな時代に生まれ育ち、大事に大事に育てられた結果、何一つ不自由を感じることなく状況が開かれていくわけで、そこには知らない間に「自分は他人と比べてエライ、有能だ」「自分には何でもできる」という錯覚にも似た「仮想的有能感」が備わってくるらしいのです。
そして、生きる知恵として習得しているものといえば、現実の世界の中でしっかり試練や困難にぶつかって超えていくのではなく、他者を軽蔑しながら自分への肯定感を味わうという方法しかないのだと著者は語っています。
他者を見下したり、軽視したり軽蔑したりすることで、いつの間にか自分の価値や能力を高く評価しているのです。その際実際の自分の能力とか実力とかは眼中にはありません。そんなことはあえて評価することもされることも好きではないのです。そうではなく、他者を悪く言うことで、自分の立場を上に置きたいだけなのです。
要するに、他者がバカに見えてくるわけです。理由などどうでもよいのです。自分が出来るかどうかも関係ないのです。そうではなく自分から見て他者がどう映るかという主観的な感覚で、評価しているに過ぎません。でも、それによって生み出されるエネルギーは、軽蔑、怒りという形で放出されますから、とんでもなく他者に対しては厳しく重いものになっていきます。常に批判的な態度で物事を見ている人たちの根底にあるものが浮かび上がってくるような気がします。
でも、これは大昔から人間の本性としてあるものです。それは「自分を神として生きたい心」です。罪と呼ばれる出来事の最初のものなのですが、まさに、「仮想的有能感」そのものです。背景としては「自然を治める」役割がありました。神様の愛をしっかり受け取りながら、その愛をすべて造られたものに反映させることが人間の役割だったはずですのに、神様との関係をぶち壊し、自分を神としすべてのものを「暴君のように支配」したくなってしまうのです。
神のように、しかし、神から誠実な愛を差し引いたような生き方の中にある種の自分を映し出しているのが現代人かもしれません。自分と神との厳然とした境界線が全く見えなくなっていました。仮想と現実の境界線が見えてこないのです。物質主義という神々は、人間を仮想的有能感に導き出すことで、人間を自由に操ることができるようになってきました。何でも買って手に入れることができるのだという発想は、それらのものが手に入らなくなったとき、生活不全に陥ることが暗示されています。
つまり物質主義的な神々がいなければ、人間は生きてはいけないと感じるほど、我慢も忍耐もできにくくなってしまっているのです。にもかかわらず、高慢な思いはへこむどころか他者に対する攻撃的な態度でますます自分の優位性をアッピールし続けています。おそらく、それに歯止めがかかるときがあるとしたら、自分が「死」という問題に直面したときくらいなものかもしれません。あるいは不治の病にかかるとか・・。
日本の若者、あるいは現代人は死にたくなるほど「負け組」に置かれることを嫌います。でも、それは自分の本当の姿を見ようとせず人のあら捜しばかりしている姿そのものです。矛盾していることにさえ気づいていません。いわゆる人間関係や好ましい絆のあり方が見えなくなっている時代なのだと思います。人の心が判らない、人の立場でものを考えることができない、自分のことしか頭にない。自分で何をしているのかわからなくなっています。
こうしろ、ああしろと命令したところで何も好転しません。心の姿勢そのものが問題だからです。心の深いところでの取り扱いが必須です。
愛に触れることが必須です。それ以外にはなかなか道が見えてきません。自分で何をどうすればよいのか、なぜこうなるのか、なぜこんなことをしてしまうのか、わからない時代とも言えるのでしょう。
だからこそ、キリストは十字架の上で祈ってくださったのです。
そのときイエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。
彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」
ルカ23:34
フライデーナイトで、あなたを変える神様の愛に触れてください。きっと、友の笑顔と神様の愛が待っています。
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